会長挨拶

第43回日本妊娠高血圧学会学術集会
関沢明彦
(昭和大学医学部産婦人科学講座)

第43回日本妊娠高血圧学会学術集会を2023年9月29日(金)〜30日(土)に、昭和大学上條記念館(東京都品川区)にて、開催させていただきます。

日本妊娠高血圧学会は、1980年に設立された歴史ある学会であり、妊娠高血圧症候群とその関連疾患についての基礎的な病態の研究や、発症予知法、発症予防法、治療法などの臨床的な課題の解決を主要なテーマとしています。この分野ではsFlt-1などの抗血管増殖因子が病態形成に主要な役割を果たしていることが明らかになったことを契機に、発症予測法が実用化され、発症前の早期介入も行われるようになるなど、本疾患にかかわる臨床は大きく変化してきています。さらに、プレコンセプションケアとして妊娠前から介入することで妊娠予後の改善が期待できること、妊娠高血圧症候群を発症した患者さんの産後を適切に管理することが将来的な健康維持に寄与すること、妊娠合併症下での胎児期の環境が出生後の生活習慣病につながることなどが明らかになり、主に妊婦を管理する産婦人科医の役割には妊娠前から出産後長期にわたる視野が求められるようになると同時に、産婦人科医のみではなく関連する専門診療科の医師や助産師、保健師、栄養士など多職種が連携して対応することの重要性が明確になってきています。

そのような状況の中で、本学会は「妊娠高血圧ヘルスケアプロバイダー」を認定する制度をスタートさせることになりました。本制度は、妊娠高血圧症候群に関する知識に習熟し、妊娠前、妊娠中および出産後にチーム医療による専門的なケアを実践することで女性の健康維持に貢献する人材の養成を目的としています。希望する医療者は所定の講習を聴講することで認定されます。本学術集会では、この資格認定を受けるための講習を初めて行うことになり、9月30日に1日講習を受講いただいた上で資格申請することで、「妊娠高血圧ヘルスケアプロバイダー」に認定されます。本学会の会員の先生におかれましては、施設内でプレコンセプションケアから産後の健康指導に及ぶ多職種連携する管理が実践できるような体制の構築を目指して、多くの医療職にこの「妊娠高血圧ヘルスケアプロバイダー」への参画についてご周知いただき、参加を呼び掛けていただきたいと考えています。

さらに、本学術集会では従来通り、妊娠高血圧症候群の基礎的、臨床的な知識をアップデートするための特別講演やシンポジウムなどを計画しています。また、一般演題はすべて口演としてご発表いただき、多くの参加者とディスカッションができるようにプログラムを工夫させていただく予定で、多くの皆様に演題を提出していただくことを期待しています。

今回の学術集会は、コロナ感染症が5類に引き下げられたポストコロナの時代における最初の学術集会になります。感染には十分な配慮は致しますが、現地のみでの開催を計画しています。本学術集会が、多くの先生にとっての妊娠高血圧症候群に関連するさまざまな課題についての解決に向けての契機となるようにプログラムを作成したいと考えております。多くの皆様方のご参加を心よりお待ち申し上げております。